薬剤師と事務員の役割分担について
今も昔も調剤薬局への世間の風当たりは強いものがあります。稼ぎ過ぎだ、医療機関で話をしたのに何故もう一度話をする必要があるのか、何回同じようなことを説明しなくてはいけないんだ、ここでも待たせられるのか、存在する意味が分からない・・・などなど、かなり辛辣な批評、声をきくこともあります。利用者の方も、薬局とはこういうもの、とわかっていても、ついそのような声をぶつけてしまうこともあるのかもしれません。
今回のこのコラムでは、調剤薬局における薬剤師と事務員の役割分担について、現在の流れや一般的な状況をご説明します。
上記のような、薬局に対すして強まる風当たりに対し、世の中の流れとしては、調剤薬局に医療機関としてのインフラ機能を持たせようという動きが出てきています。いわゆる、「対物業務から対人業務へ」という舵切が行われる傾向が出てきました。それを象徴する例として、調剤報酬改定の度に、対人業務に関する報酬の点数(指導加算)の項目や点数が増えること、逆に対物業務である薬価差益や調剤技術料等の利益を減額させること、等が挙げられます。
他方で、対人業務を行うための薬剤師の人手不足に悩む調剤薬局も少なくないのが実情で、上記の方針と薬局の実情が反比例をしているような状況なのも否めません。また、対物業務の量が減る訳ではないので、対人業務に人員を割くというのは言うほど簡単ではないように思います。
0402通知により事務員の調剤関与が明確化
そのような中、少し前の話にはなりますが、2018年に0402通知と呼ばれる、事務員の調剤関与に関する通達が出たことは皆さんよくご存じかと思います。もともと、グレーラインとされていた事務員の調剤関与について、明確にした重要な通知です。この通知で薬剤師の監督下という条件付ではあるものの、必ずしも薬剤師が全て調剤をしなくても良いということが明確になったのです。
これは、今まで不明瞭とされていたものを明確にするという趣旨もあるかと思いますが、先に述べた通り人手不足対策や対物業務への薬剤師の負担の軽減により、対人業務にウエイトを置いて欲しいというメッセージも込められているように思います。
そこで、今更ではありますが、調剤薬局業務の内、薬剤師が直接行わなくてはならない業務というのは、一体どこまでなのか、改めて確認してみましょう。
調剤薬局における薬剤師の業務
業務の中で間違いなく薬剤師が行わなければならないのは服薬指導です。これは法律上薬剤師が行うこととされ、こちらは疑う余地は全くないと言えます。当然これに関連して疑義照会も薬剤師が行うこととされており、処方内容に関係することは薬剤師の専権事項といえるでしょう。他方で、処方の入力自体は事務員が行うことも可能です。
それでは、薬の取り扱いはどうでしょうか。まず、調剤については、0402通知によると、薬剤師の目が届く範囲で事務員がPTPシートに包まれた薬品をピッキングすることは認められています。同様に、調剤済の薬を梱包して患者さんへ送付する行為も認められます。
一方で事務員が直接錠剤を半錠に割ったり、粉砕をしたりする行為、散剤や水剤等の製剤行為はNGとされます。薬に直接触れるような行為は、薬剤の品質等に与えるものとして、禁止とされる訳です。よって、これらは薬剤師が行わなければならない仕事といえるでしょう。もっとも、製剤といっても分包機を操作するという行為は、判断に乏しいため良いとされていますので、「薬剤師が薬をセットした分包機のスイッチを、事務員が押す」ということはしても良いとされます。
在庫管理は薬剤師のみの業務? 局内マニュアルの必要性
他方で、在庫の発注や検品、入庫等の在庫管理はどうでしょうか?これらは、患者さんに薬を渡すために薬剤を触れる直接の業務ではないため調剤行為とは言えず、また、薬剤の品質等に変化を生じさせる行為とも言えないので、こういった在庫管理は薬剤師でなくとも行うことができます。もっとも、最終的な在庫管理の責任者は管理薬剤師となるのですから、定期的な管理薬剤師のチェックや誰にどのように在庫管理業務を依頼するのかという局内でのマニュアルや内規や取り決めはしっかりと準備する必要があるものと考えられます。
最終的には、0402通知の最後にもあるように、事務員がどのような業務を行うのかは、局内でしっかり役割分担を行い、事務員が行った業務に関しては最終的には管理薬剤師等の薬剤師が確認する必要があります。そして、そのような体制をきちんと構築すべき旨0402通知にも記載があります。
業務内容を整理し、役割分担を明確に
2022年3月の調剤報酬改定ではリフィル処方も解禁となり、今後は今以上に調剤薬局に求められる業務は増えていくように思います。一度局内で業務内容を整理し、しっかり役割分担をすることで、人員配置の見直しや対物業務への薬剤師の負荷が減り、対物業務から対人業務へシフトをすることができるかもしれません。ただし、くれぐれも適法と違法の境界線は常に意識をして行っていくことは忘れないようにしてください。わからなくなってしまったら、必ず保健所等に確認をするようにしましょう。

弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所

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