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残業代請求の時効

 いわゆる「ブラック」企業に勤めている方は残業代が出ないと嘆いている方も多いのではないでしょうか。しかし、企業は残業代を支払う義務がありますので、労働者から請求される可能性は少なくありません。今回は未払残業代をいつまでの期間分を請求できるのか、労働基準法にも触れながら解説いたします。

残業代は積もり積もってから請求される

 労働者を法定労働時間(原則として1日8時間)を超えて働かせた場合、使用者は、労働者に対し、割増賃金を支払う義務があります(労基法37条1項)。いわゆる残業代と言われるものですが、職場によってはずさんな勤怠管理がされていたりすることもありますし、何らかの手当に含まれることとして残業代を満額支払っていないことがあります。当然、労働者側で実際の労働時間の立証に成功した場合には、使用者は法定の残業代を支払う義務を負います。また、毎月一定額を残業代と支払うためには判例の要件を満たす必要があり、使用者としては残業代という認識であったとしても、必ずしも、それが裁判所において残業代と認められる訳ではありません。
 上記のような実態が存在するからといって、労働者がすぐに使用者に請求するかというとそうとは限りません。大抵の場合、労働者も職場の人間関係を気にしますので、使用者との関係が悪くなった後、勤務を始めて何年も経ってから、未払残業代の請求に踏み出すこともあるのです。

いつまで遡って請求できるのか

 それでは、労働者が残業代を請求するとして、いつの分から請求されるのでしょうか。就職してから請求時までの分でしょうか。いいえ、そうではありません。労働者が有する残業代請求権もいわゆる債権ですから消滅時効の対象となります。すなわち、一定の期間が経過すると請求出来なくなるということです。
 従来、残業代を含め、賃金請求権の時効は2年間とされていました。これは、当時の民法では1年と定められていたものを(改正前民法174条1号)、それでは短すぎる、労働者保護に欠けるとして、労働基準法により2年に延長していたのです。もっとも、2017年の改正民法では、そもそも賃金請求権の時効を1年とする規定が削除され、民法上の消滅時効期間は「権利行使できることを知った時から5年、権利行使できるときから10年」に統一されることになりました(改正民法166条1項)。そのため、民法上の賃金請求権の時効期間は5年又は10年であるにもかかわらず、労働者を保護するための労働基準法によって2年に短縮されるというおかしな事態が生じることとなり、改正民法成立後、実際に施行されるまでの間、当該状況に如何なる対処すべきかとの議論が巻き起こったのです。
 

労働基準法の改正

 このような中で、令和2年4月1日に労働基準法が改正され、賃金請求権の時効が5年間に延長されました。もっとも、これは、当分の間は3年間とするとの留保が付された上でのことです。未払い残業代等の請求による使用者へのダメージが過大になってしまうことに配慮した結果だと考えられますが、いずれにせよ、将来的には未払残業代等の時効が5年となります。従来、2年分に渡るだけでも多額になりがちであった未払残業代の請求ですが、今後、使用者にとっては更に大きなリスクとなることが見込まれます。始業前の準備時間は労働時間に含めていない、退勤処理をさせた後でも残業させている、職務手当との名称で残業代を支払っているなどの労務管理をされている場合には、今後、莫大な残業代が請求されるおそれがあります。この機会に自社の状況を見直されてはいかがでしょうか。

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