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雇用契約と秘密保持義務

 今回は、雇用契約と秘密保持義務の関係性について記載します。

事例紹介

Y社は経営再建計画(生産機種、機種ごとの月産台数、月産金額、機械原価、起業費など)を立案した。この計画書は、工場長から各課長への説明資料として数部複写され、その複写文書はこれよりも秘密性の少ない他の秘密文書と同一に取り扱われる危険性があることから、「秘」との表示はなかったが、工場長が各課長に極秘扱いすることを命じていた。X1はこの複写文書を借り出して、X2とともにほぼ同一内容の写しをガリ版切りで謄写印刷し、他の従業員に配布・討議した。Y社は、Xらの行為が懲戒解雇事由である「業務上重要な秘密を社外に漏らし又は漏らそうとしたとき」と、労働協約の同様の定めに当たるとして、懲戒解雇しました。

裁判所の判断

このような事案で、懲戒解雇の有効性が争われた事案で、裁判所は、「労働者は労働契約にもとづく附随的義務として、信義則上、使用者の利益をことさらに害するような行為を避けるべき責務を負うが、その一つとして使用者の業務上の秘密を洩らさないとの義務を負うものと解せられる。信義則の支配、従ってこの義務は労働者すべてに共通である。もとより使用者の業務上の秘密といっても、その秘密にかかわり合う程度は労働者各人の職務内容により異るが、管理職でないからといってこの義務を免れることはなく、又自己の担当する職務外の事項であっても、これを秘密と知りながら洩らすことも許されない。」と判断しています(東京高判昭和55年2月18日/労働関係民事裁判例集31巻1号49頁)。
本件では、就業規則や労働協約に従業員の秘密保持義務を根拠付ける定めがありましたが、仮に、就業規則や個別の特約がなくとも、労働者は信義則に基づき使用者の正当な利益を不当に侵害しない付随義務(誠実義務)として、秘密保持義務を負うと解されます。
このとき、会社の秘密保持と対立する利益は、労働者の表現の自由や職業選択の自由であり、使用者の利益との衡量が必要となります。使用者の利益に関していうと、漏洩された情報が、業務上、どれだけ重要な秘密であるかという点が判断の分かれ目になってくるものと考えられます。
なお、労働者の退職後についても、秘密保持義務は課せられます。もっとも、労働者の表現の自由や職業選択の自由を制約することから、秘密保持義務の「範囲」については、秘密の性質、範囲、価値、当事者の退職前の地位に照らして合理的範囲に限定されるため、雇用契約中の秘密保持義務よりは程度が低くなることが多いと思われます。

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