割増賃金支払請求への対応~飲食店に対する請求事例から見る対応と対策~
2018年05月1日
セミナーレジュメ
事例:退職した従業員からの未払賃金等支払請求事件
(株)ソレイユが料理長として、Aさんを採用
【採用条件】
・本給 27万円
・役職手当 1万円
・レストランの従業員の採用はAが担当する。
その後の経緯
採用から約8か月後に、Aさんは、退職
退職の数か月後、内容証明郵便で未払い
賃金336万円の支払請求。
⇓
㈱ソレイユは、支払うことはできないと回答
⇓
裁判所から、労働審判の呼出状!
請求金額は536万円!!
Aの請求内容(536万円の内訳)
時間外手当(残業代) 206万円
休日手当 80万円
深夜手当 50万円
慰謝料 200万円
———————————-
合 計 536万円
割増賃金の計算方法
- 1時間あたりの賃金額×時間外労働時間数×割増賃金率
- 時間あたりの賃金額:基礎賃金÷所定労働時間
- 基礎賃金:所定労働時間の労働に対して支払われる賃金
- 所定労働時間:月によって異なる場合は1年間における1月平均の所定労働時間数
割増賃金の基礎となる賃金(基礎賃金)
労働基準法 第11条
この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。
① 労働の対償
② 使用者が労働者に支払うもの
基礎賃金から除外できる手当
- 家族手当
- 通勤手当
- 別居手当
- 子女教育手当
- 住宅手当
- 臨時に支払われた賃金
- 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金
基礎賃金から除外できない手当
- 左記の手当以外の手当
所定労働時間の算出方法
月給制の場合
⇒ 毎月同じ場合には、月の所定労働時間
⇒ 月によって所定労働時間が異なる場合には
1年間の1か月平均所定労働時間
※(365日-休日・祝日)×1日の労働時間÷12
割増賃金の計算方法
例)
基礎賃金月額:28万円
所定労働時間:174時間
1時間あたりの賃金額:28万円÷174時間
=1609円
時間外手当=1609円×1.25×時間外労働時間
深夜手当 =1609円×1.25×時間外労働時間
休日手当 =1609円×1.35×時間外労働時間
具体的な請求
- 残業代
1609円×1.25×1024時間≒206万円
(1か月あたり約128時間) - 深夜労働
1609円×1.25×249時間≒50万円
(1か月あたり約31時間) - 休日労働
1609円×1.35×398時間≒80万円
(1か月あたり約50時間)
Aの請求内容の個別的な検討
- 時間外労働に対する割増賃金(残業代)とは
- 休日労働に対する割増賃金とは
- 深夜労働に対する割増賃金とは
- 慰謝料
⇒ 使用者が負う「安全配慮義務」違反
割増賃金とは
労働時間とは
使用者の指揮命令下にある時間
法定労働時間:1日8時間、週40時間
例)タイムカードを押した後の掃除・着替えは労働時間に含まれるか?
⇒清掃:労働時間に含まれ得る
着替え:更衣室での着替えが義務付けられている場合は労働時間
更衣室への移動時間:通常は含まれない
法定時間外労働とは
法内残業と法定時間外労働
⇒法内残業:法定労働時間の範囲内ではあるが就業規則等で定める労働時間を越える労働
法定時間外労働:週40時間
1日8時間を超える労働
36協定とは
- 労働基準法36条に規定
- 法定時間外労働を行わせる際に必要
- 36協定がない法定外時間外労働には6か月以下の懲役または30万円以下の罰金
休日労働とは
- 休日労働
法定休日(週1日又は4週を通じて4日)に
行われる労働
⇒ 法定休日は週1日
週休2日制であったとしても、法定休日は1日だけ - 効果
35%以上の割増賃金の支払い
※実際には、135%の支払い
深夜労働とは
- 深夜労働
午後10時から午前5時までの間の労働 - 効果
25%以上の割増賃金の支払い
※実際には、125%の支払い
法定時間外労働の効果のまとめ
割増賃金を支払わなければならない
⇒普通時間外労働:25%以上
※1か月に60時間以上の残業に対する割増
賃金は50%以上
深夜労働:25%以上
休日労働:35%以上
時間外労働が深夜業になった場合:50%以上
休日労働が深夜業になった場合:60%以上
※休日労働は常に35%以上
法定時間外労働の効果のまとめ
Aさんの請求に対する会社側の反論
- 管理監督者:労働時間、休日に関する規定が適用されない
- 割増賃金は所定賃金の中に予め含まれている
裁判所はどのように判断をするか・・・。
対策①
固定残業代制度の導入
⇒契約書・就業規則において、一定金額が残業代であることを明示することにより、当該金額を残業として支払ったこととする
例)月給20万円
↓
月給17万円+固定残業代3万円
対策②
コストがかからないようにするためには?
⇒深夜労働と残業代が同時に発生しないようなシフトの作成
対策③
今回の事案では、退職後に突然の請求
⇒退職時に明確な合意書を作成する(※後で、脅された!などと言われない配慮必要)
以上
弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所
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