リモートワークの進展と地方転勤によるマンション貸出
世の中ではリモートワークもだいぶ進んできましたが、「都心部にマンションを購入して通勤していたのに、突然地方に転勤することになった!」という方もまだまだいらっしゃると思います。そして、将来的にまた戻ってくることを考えると、マンションを売却したくはないけど、そのままにしておくのはもったいないので、地方転勤の間は誰かにマンションを貸したいという方も多いと思います。
しかし、一度貸してしまうと、いざ戻ろうとした際に、賃借人から立退料の支払いを求められてしまうかもしれません。
なぜ立退料が必要なのか?
建物の賃貸人が、賃貸借契約の更新を拒絶したり、解約の申入れをする場合には、法律上、「正当な事由」が必要であると定められています(借地借家法第28条)。これは、賃借人にとって建物が生活の基盤となっているため、突然の更新拒絶や解約申し出は賃借人にとって大変困った状況を招くからです。そのため、賃借人をむやみに追い出すことを防ぐために、正当事由が求められています。
正当事由は、賃借人側に明らかな問題がある場合に認められやすいです。例えば、以下のような場合が挙げられます。
- 家賃を何か月も滞納している
- ペット不可の物件なのにペットを飼っている
- 近隣住民に著しく迷惑をかけている
しかし、賃借人側に問題がない場合には、賃貸人と賃借人が当該建物の使用を必要とする事情、従前の経過、これまでの利用状況、建物の現況、そして賃貸人が賃借人に支払う立退料を総合的に考慮して、正当事由があるかどうかが判断されます。つまり、立退料は正当事由の判断における一つの考慮事項となります。賃借人に何ら問題がない場合、立退料を支払わずに退去させるのは難しいです。
なお、賃貸借契約時に最初から更新を前提としない定期建物賃貸借契約を締結すれば、更新を拒絶する際に正当事由は不要になりますが、定期建物賃貸借契約では借り手を見つけるのが難しいという現状があります。
立退料の額を決める際の考慮要素は?
立退料の額については、法律等で決まった金額が定められているわけではありませんが、その金額が高ければ高いほど正当事由として認められやすくなります。立退料は、退去することにより賃借人に発生する損害を補償する趣旨があるため、以下の要素が考慮されます。
- 転居先での賃貸借契約に伴う敷金や礼金
- 引越費用
- その他転居に要する費用の合計
以上のように、立退料には決まった金額がないため、賃借人と立退料の額で折り合いがつかない場合には、専門家である弁護士に相談することをおすすめします。