倒産に際して知っておくべき10か条

2021年、今もなお続くコロナ禍で、中小企業の事業再生の動きが鈍く、廃業を選択する企業も増えているといわれています。ここでは、倒産、廃業について、経営者が知っておくべきポイントについて説明します。

2020年の倒産・廃業の背景

東京商工リサーチがこのほど発表したデータによると、国内での新型コロナの感染拡大が本格的に確認された2020年2月からの、新型コロナウイルス感染拡大に関連する負債1000万円以上の経営破たんは900件を超えました。内訳は倒産が831件、弁護士一任と準備中が76件となっています。

2021年の緊急事態宣言は、地域を限定したものではありましたが、発令されていない地域にも当然大きな影響があります。移動の自粛やテレワークの拡大は交通機関に多大なる影響が出ますし、消費者の動きの鈍化や、飲食店の時短営業により、多くの関連企業の倒産・廃業が免れなくなってしまうかもしれません。

「倒産」や「廃業」といった言葉が頭をかすめられた経営者の方に、まず最低限知っておいていただきたいポイントをまとめました。

企業が倒産・廃業を考えるにあたって

①「倒産」は「破産」と同じ意味ではない

倒産とは、債務者が、自ら負っている債務を返済できなくなった経済状態にあることを言います。よって、通常、何らかの対応をとる必要があります。しかし、「倒産」=「破産」ではありません。「破産」手続は、倒産処理手続の中の一つであるに過ぎず、両者は同じ意味ではありません。

倒産処理手続には、破産手続の他、民事再生手続や会社更生手続もあります。その他、特定調停や公正中立な第三者機関を利用した整理手続、裁判所等の関与のない任意整理といったものも、広い意味で倒産処理手続と言えます。

破産手続の他、これら各手続をあわせて倒産処理手続と言うのです。このうち、破産は、「清算型」の手続と言われており、例えば民事再生手続等は「再建型」手続と言われています。「倒産」と言っても、会社自体を残すことが出来たり、事業を続けることが出来たり、資産を残せたり、従業員の雇用を守れたり・・・といったことが、状況や手続によってはあり得るのです。

②そもそも、倒産処理手続の前にできることはないか確認・検討する

既に十分、確認・検討済みかも知れませんが、倒産処理手続の前にできることはないか、改めて確認・検討する必要があります。例えば、未回収の債権をうまく回収出来れば、倒産処理手続をとることもなく、倒産状態を回避できる場合もあります。

コロナや自然災害などにおける特別な援助制度等の存在もきちんと把握・確認する必要があります。倒産に瀕している状態において、物事を冷静に見るということはとても難しいことかと思いますし、専門家の目で見て初めて気付くということもあります。倒産処理手続が回避出来るのであれば、回避することが望ましいでしょう。

③状況にあった、適切な倒産処理手続を選択する

やはり何らかの倒産処理手続はとらざるを得ないとした場合、状況にあった「適切な倒産処理手続」を選択することが非常に重要です。上記した通り、倒産処理手続には、「清算型」のものもあれば「再建型」のものもあります。裁判所の関与のもと行うものもあれば、裁判所が関与しない形で行うものもあります。

どの手続を選択すべきかは、資産の状況、負債の状況、手元資金・流動資産の多寡、本業自体は儲かっているのか、事業の将来性はあるのか、スポンサーの見込みがあるか、債権者の協力が得られるか等々を勘案しながら決めていくことになります。破産手続を回避出来るのであれば、破産手続ではなく他の手続をとる方が望ましいのが通常です。他方、本来、破産手続をとるべき状態であるにも拘わらず、無理に他の手続をとろうとしたり、放置したりしていると、益々状況が悪化しかねません。もちろん、「時期」も重要です。対応が遅れると、不利益を被ることもあります。

適切なタイミングで、適切な倒産処理手続をとることが、とても重要です。

④弁護士等に相談・依頼することの重要性

適切な倒産処理手続の選択が大切だといっても、自分自身で選択することは容易なことではありません。ましてや、日々の業務に追われ、債権者や取引先対応に追われ、債務の返済に追われ・・・といった状況であるとすれば、冷静に倒産処理手続を検討するというのは著しく困難であると言えます。やはり、弁護士等の専門家に相談・依頼することが適切な対応と言えます。また、相談・依頼が遅すぎると、本来、選択することが可能であった対応がとれなくなる、ということも考えられますので、出来るだけ早めに相談・依頼するのが良いでしょう。

⑤弁護士に依頼した場合、その後の債権者対応は原則として代理人弁護士が行う

倒産に瀕している状態の場合、債権者から電話や手紙による督促が毎日のように来ていて、精神的にも限界である、といった状況がまま見られます。この点、弁護士に債務の整理を依頼すれば、原則として、その後の債権者対応は代理人となった弁護士が行うことになります。「債権者からの電話や手紙による督促がぴたっと止み、救われた。」という声もよく耳にします。

⑥事業を残したい場合

会社をやっている方で、「事業を残したい」と考えられている場合は、原則として、破産手続以外の対応(民事再生手続等)をとることにより、事業の存続を模索することになります。なお、事業譲渡と破産手続を組み合わせるなどし、これまでの会社(法人)は破産するものの、事業自体は新会社(他の会社)において存続するということもあり得ます。

⑦連帯保証人の責任は基本的に存続する

よく見受けられる状況の一つとして、会社(法人)の債務を代表者等の個人が連帯保証をしているというケースがあります。この場合、会社が破産をしても、連帯保証人としての責任は存続します。よって、連帯保証人としての責任があることを前提に、個人(保証人)として任意に支払いをするのか、会社と一緒に個人の方も破産申立てをするのか、例えば経営者保証に関するガイドラインを活用し保証債務の整理をするのか、等を検討していくことになります。

⑧マイホーム(住居)を残したい場合

債務超過に陥った個人の方で、「住居だけは処分したくない」「何とか今の家に住み続けたい」と希望される方も少なくありません。そういった場合は、住宅を残したままに債務整理をする任意整理等の方法を検討することになります。また、個人再生手続を選択し住宅ローン特則を利用するという方法も、住居を残しながら債務を整理する典型的な方法の一つです。この方法をとるためにはいくつかの条件を満たす必要がありますが、うまくいけば、住宅は残しながら、住宅ローン以外の債務を圧縮することが出来ます。

破産手続の場合は、住宅を手放すことを覚悟しなければなりませんが、破産手続の場合でも、住宅を残すことが出来る場合がないわけではありません。

⑨破産だとしても、全ての個人財産を失う訳ではない

破産の場合、破産者の財産を換価し、債権者の配当等に充てるのが原則ではありますが、一定程度の個人財産は換価されずに済みます。その典型の一つは、「自由財産」と呼ばれるものであり、例えば、個人が有する99万円以下の現金や残高が20万円以下の預貯金等は、換価されずに破産者が保持することが認められています。

また、価値が無いと判断されたり、換価回収困難と判断されたりなどし、破産財団から放棄された財産は、結果として破産者の元に戻ってきます。例えば、古くてほとんど価値がつかないような自動車等は、破産財団から放棄され、換価されないということが、ままあります。

⑩免責の重要性及び免責不許可事由等について

個人の方が破産手続をとる場合の目的は、主として、「免責」を得ることにあります。破産が認められても、免責許可決定を得なければ、債務の支払義務はなくなりません。そのため、破産手続開始の申立てと共に、免責許可の申立てをし、免責の許可を得ることを目指します。財産の隠匿行為や換金行為(例えば、クレジットカードで大量の新幹線乗車券を購入し、直後に質屋で換金する行為)、借金の原因が主としてギャンブルや浪費等である場合は、「免責不許可事由」があるとされ、免責が許可されない場合がありますので、注意が必要です(ただ、免責不許可事由がある場合でも、「裁量免責」という形で、免責を得ることが出来る可能性はあります。)。また、税金等、一定の債権は、「非免責債権」とされ、免責許可を得られたとしても支払い義務が残りますので、その点も注意が必要です。

まずは専門家にご相談下さい

ポイントの④、⑤でも説明しましたが、法人破産には様々な手続きが必要であり、少しでも迅速に、的確に処理をすることが求められます。自分自身でお調べになることも大変大切ですが、万が一対応を誤ってしまうと、取り返しのつかないことになりかねません。専門家である弁護士に一度ご相談下さい。

丸の内ソレイユ法律事務所では、法人・個人の方の破産・再生に関するご相談にも初回無料で対応しております。是非ご連絡ください。

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