新型コロナウィルス感染拡大の影響を受け、苦境に立たされた業界といえば、飲食業や観光業、アパレル関連などが注目されてきましたが、影響が長引くにつれ、建設業界の倒産も増えてきています。倒産の原因としてはコロナ禍による工事の延期・中止による事業環境の悪化が多くを占めているようですが、建設業の法人が破産手続きをとる場合に注意すべき点をご説明します。
建設業の破産の特徴
建設業の破産では、当該法人の注文者、下請け業者、従業員など利害関係人が多岐にわたります。特に、請負った仕掛工事をどのように処理するかが問題となります。請負契約とは、請負人である建設会社が、建物の建設など特定の仕事をすることを約し、注文者がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約束する契約のことをいいます。法律上、請負契約の途中、つまり建物の建設の途中で建設会社の破産手続が開始されたとしても、当然にその請負契約が終了するとされていません。
そこで、建設会社は、破産手続開始決定後も裁判所の許可を得て、事業の継続をすることができるようになっています。もっとも、破産手続開始決定後もやみくもに仕掛工事を完成させるわけではありません。あくまで仕掛工事を完成させることで、破産財団を増殖させることができる見込みがある場合に、破産管財人の管理の下で、元の従業員や下請け業者を使って工事を完成することを検討することになります。
しかしながら、仮に工事を継続する体制を整えることができたとしても、工事を継続することになれば、労災事故が発生した場合の補償のリスクや、完成後の瑕疵担保責任のリスクが伴うことになります。そのため、財団を増殖させる見込みがあったとしても、破産に際して、実際に仕掛工事の完成を選択するケースはあまり多くはありません。むしろ、もともと破産する建設会社が使っていた下請け会社が注文者と直接契約をして工事を継続するほうが、注文者にとってもメリットがあるため、速やかにそのような利害関係人間の関係調整に努めるべき場合が多いと思われます。
建退共による退職金の支払い
法人が破産する場合、労働債権は、独立行政法人労働者健康福祉機構による未払い賃金立替制度によって保障される範囲以外は、破産手続きによって回収せざるを得ませんが、破産する建設会社が建設業退職金共済制度(建退共)によって退職金を準備していた場合には、破産手続きに関係なく、全額の支払いを受けることができます。破産を検討されている建設会社で、従業員のために建退共で退職金を準備している場合には、解雇後、従業員がすぐに退職金の申請ができるように準備をしておくとよいでしょう。
今回は建設業における破産の特徴的な点についてご説明しました。破産手続きを円滑にするためにも、早いうちから破産に詳しい弁護士にご相談することをお勧めします。気軽に当事務所にご相談ください。