コロナ禍における飲食業の現状
今回のコロナ禍において、もっとも甚大な影響を受けた業界といえば、飲食業の皆様でしょう。営業時間の短縮要請などの影響もあり、帝国データバンクの発表では、2020年度上半期(4~9月)の飲食店の倒産件数は392件で、過去最多。このままの状況が続くと、2020年度の倒産件数は、通年で過去最多となっている2019年度の784件を上回る可能性があるとしています。
個人経営の店舗はもちろん、いくつかの店舗を経営する皆様が破産すべき際、いくつか、単店舗とは違う、留意点がございますので、下記で説明します。
複数店舗経営の破産時の注意点
1.事前準備段階
複数店舗を経営している場合、破産の事前準備段階において、会社(事業)全体の収支状況の外、店舗ごとの収支状況を把握することが重要です。また、店舗ごとに、店舗賃貸借契約等の内容、設備、従業員の把握等をしておくことも重要であると言えます。その上で、破産申立時期を見据えながら、店舗の閉店スケジュールを組んでいくことになります。店舗ごとに順次閉店していくのか、一斉に閉店するのかといったことも検討していくことになります。
これらの検討には、法律専門家の関与が不可欠であると言えます。例えば、ある店舗に関する未払債務だけを支払い続け、別の店舗に関する未払債務は支払いをしなかったということが問題となる場合もあります。破産の事前準備段階においては、ご本人としては問題がないと考えて行ったことが、実は、法的に問題がある行為だった、ということがあり得ますので、十分注意が必要です。特に、複数店舗を経営している場合、店舗ごとに別異の取り扱いをして良い場面なのか、そうではないのかといったことに注意する必要があります。
2.破産申立時
破産を申立てた時点において、各店舗の現場が混乱することが考えられます。特に、いわゆる密行型の破産申立の場合は、大きな混乱をすることが予想されます。また、各店舗における財産を保全する必要もあります。破産申立時には、財産の保全の外、従業員や取引先等に対し、現在の状況や今後予想される状況の説明、また、法的に「してはいけないこと」の説明をする必要が生じてきます。
代理人弁護士が現場に赴き、協力して必要な説明等をすることもあります。特に、複数店舗を経営している場合は、誰がどの店舗に行き、申立当日にどういった対応をするのか、事前にしっかりと調整をしておき、当日実行することになります。当日の対応を誤ったり、対応を怠ったりすると、その後の手続がスムーズに進行しない恐れや、場合によっては損害賠償等の責任を負わされる恐れがありますので、注意が必要です。
ショッピングモール店舗の注意点
ショッピングモール等施設内の店舗を持っているときには、出店に係る契約の内容をきちんと把握することが重要です。単純な賃貸借契約であれば、特定の場所を借り、それに対し定額の月額賃料を支払っていく…というだけの話かもしれませんが、ショッピングモール等に係る契約は、通常、より複雑な契約内容となっており、例えば売上金に関する取扱いが契約条項において定められていたりします。どういった契約内容となっており、それに関しどのような対応をするのかという点には注意が必要であり、やはり専門家の関与が不可欠であると言えます。
弁護士に相談すべき理由
以上の通り、破産をするに際しては、事前準備の段階においても、どのようなことをすべきか、あるいは、どのようなことをしてはいけないかといったことを、法的な観点から確認する必要があり、専門家たる弁護士に早めに相談すべきであると言えます。また、破産を検討されている方は、それまでの日々の経営において、あるいは金策において、大変な労苦があったかと思います。この点、弁護士が受任し、債権者に対して受任通知を発送すれば、その後の債権者対応は基本的に代理人弁護士が行うことになります。「精神的にも非常に助かった!」という声をよく耳にします。弁護士が窓口となり、債権者対応を任せられることも、弁護士に依頼するメリットの一つであると言えます。
弁護士の選び方
1.円滑なコミュニケーションが取れるかどうか
それでは、どのような弁護士を選ぶべきでしょうか。破産手続、裁判手続に精通していることは元より、やはり、円滑なコミュニケーションが取れる法律事務所・弁護士かどうかという点は重要です。例えば、
- 経営の現状や対策を分かりやすく説明してくれるかどうか
- 店舗でのトラブル等緊急時にすぐに連絡が取れるかどうか
- 飲食店のトラブルで起こりやすい労務管理の相談に精通した弁護士かどうか
といった点が、一つの判断要素になるかと思います。当事務所は、チャットワーク・WEB会議等を活用するなどし、タイムリーに、円滑にコミュニケーションが取れるよう心掛けております。また、当事務所には「労務問題チーム」もあり、同チームと適宜連携をしながら、破産手続に付随する労務管理の点についても対応することが可能です。
2.実績
また、弁護士を選ぶにあたり、「実績」というものも重要かと思います。例えば、
- 飲食店の顧問弁護士の経験があるかどうか
- 破産事件の実績があるかどうか
といった点が判断要素になり得ます。当事務所は飲食店を経営する会社の顧問業務もしており、飲食業の実態や経営の内容を踏まえた上で適切に法的対応が出来るかと思います。また、個人法人を問わず破産申立経験も豊富にあり、裁判所より選任される破産管財人経験を有する弁護士も所属しております。破産につき悩まれている方は是非当事務所にご相談頂ければと思います。