春が近づくと、一気に学習塾、通信教育などの広告が増えてきていると思われるのではないでしょうか。
中学、高校、大学などの合格発表が一通り終わると塾などは新学期に向けて集客を活発化します。
実際に、お子さんを塾に入れようと思う親御さんの半数近くが直近の合格実績を基にしているとも言われています。
こうした時期だからこそ、業界内の販促・広告・プロモーション活動が活発化し、関連法規に違反してしまう例が起きてしまいます。
今回は、今年に入って学習塾に対して出された2件の措置命令についてご説明しています。
学習塾系に相次ぐ措置命令
毎年、新年度を迎えるこの時期に、広告が一斉に増える印象のある業界といえば、お子様向けの進学塾、学習塾などの教育業界ではないでしょうか。チラシやテレビCM、電車などの車内広告でもこの時期一気に目につくようになります。
こうした「旬」の業界、話題だからということもないはずですが、今年に入ってから2件、消費者庁が学習指導塾に対する措置命令を出しました。わが子の教育を何とかしたい、という親の思いに広告は絶大な効果を発揮します。だからこそ注意が必要となりますので、ここでは、今年に入ってから出された2件の学習塾に対する措置命令を紹介します。
「個別指導のサブスク」をうたった学習塾が景表法違反(有利誤認)による措置命令
3月2日、消費者庁は、学習塾を運営するA社に対して、景表法に基づく措置命令を出しました。これは、同社が中学1年生を対象とする個別指導にかかる役務について、ウェブサイトに紹介した料金説明の一部が消費者に誤認させる表示だったためです。
措置命令の概要によると、同社は、自社のWebサイトにおいて他の個別指導塾との料金比較表、自社およびほかの事業者がそれぞれ提供する個別指導の月謝や指導時間数に関する比較表などを掲載、あたかも1時間当たりの授業料が835円であり、他の事業者よりも月謝が安いかのように表示していました。しかし、実際は、1時間当たりの授業料金は1188円であり、実際のものよりも著しく有利であると誤認させていたため、景表法違反(有利誤認)であると指摘されました。
満足度調査でNo.1表示をしていた個別学習指導企業に優良誤認であると措置命令
また、1月12日には、オンライン個別学習塾を運営するB社が、No.1表示が合理的な根拠に基づかないとして、景品表示法上の優良誤認表示に該当、措置命令を受けました。
No.1やランキング1位、など、消費者への訴求力が大きい表現には合理的な根拠が必要です。近年も、エステサロンなどが「満足度ナンバーワン」などと表示し、措置命令を受けていますが、今回は学習塾が対象となりました。
同社は、自社ウェブサイトにて「オンライン家庭教師で利用者満足度No.1に選ばれました!」、「第1位オンライン家庭教師 利用者満足度」、「第1位 オンライン家庭教師 口コミ人気度」と表示していたところ、この表示には合理的根拠がなく、景品表示法上の優良誤認表示に当たるとされました。
比較広告に関する弁護士解説
HPなどの媒体で、自社の商品・役務(サービス)の訴求力を高めるために、キャッチーかつインパクトの高い表現は必要不可欠です。
当事務所の企業法務チームの阿部栄一郎弁護士は次のように分析しています。
今回、措置命令の対象となっている①比較広告、②No.1表示は、学習塾や教育関係の広告以外でもよく見かけます。
①比較広告の際に注意するのは、やはり、同じ条件で比較しているか否かという点でしょう。他社が異なる条件で商品や役務を提供しているにもかかわらず、他社の商品や役務と比較して自社の商品や役務が優れていると広告する場合は、不適切な表示となり、優良誤認と評価される可能性が高まります。
また、②No.1表示をする際に注意するのは、客観的な調査に基づいているか、調査結果を正確かつ適正に引用しているかという点になります。自社が有利となるようにリサーチ会社に調査を依頼したり、自社の商品や役務を利用したことがない人達に対する調査結果に基づくNo.1表示の場合、優良誤認と評価される可能性が高まります。
今後、景表法の改正によって、優良誤認に違反した場合の刑事罰が設けられる予定となっておりますので、広告には、より一層注意をした方が良いでしょう。