不動産オーナーの破産について

新型コロナウィルスの影響と不動産オーナーの状況

新型コロナウィルスによる影響が各方面へ及ぶ中で、休業に追い込まれたテナントの撤退が相次ぐなどして空室が増え、非常に苦しい状況に追い込まれている不動産オーナーの方もいらっしゃるのではないでしょうか。また、リモートワークの推進とともにオフィス不要論も出てきており、今後ますます苦境に立たされる不動産オーナーの方が増えることが予想されます。そこで、不動産オーナーが破産した場合における、不動産の入居者との法律関係について解説いたします。

破産手続きの開始時点で賃貸借契約が存続している場合の手続き

破産手続の開始時点で賃貸借契約が存続している場合、当該賃貸借契約は、当事者双方がその履行を完了していないものとして、破産法53条1項により、破産管財人が契約を解除するか否かを選択できるのが基本です。

もっとも、破産法53条については、賃借人保護の観点から例外規定(同法56条)が設けられており、賃借人が第三者対抗要件を備えている場合には、53条の適用がないとされています。

不動産の入居者は、現に建物の引渡しを受けており、第三者対抗要件を備えている場合に該当しますので、不動産オーナーは、破産しても賃貸借契約を解除することはできないということになります(なお、民法に基づく解除や合意解除は可能です。)。

そのため、破産管財人は、入居者に対して賃料の支払を請求し、入居者は、引き続き不動産の使用収益が可能となります。

もっとも、破産する以上、不動産オーナーと入居者との間の契約を維持するわけにはいきませんから、破産管財人は、入居者がいる前提で不動産を任意売却したり、場合によっては当該不動産を破産財団から放棄したりするなどして、不動産オーナーとの賃貸借契約を清算することになります。不動産の売却に際して入居者がいない方が良い場合には、立退料を支払って賃貸借契約を終了させることもあります。

敷金はどのようになるのでしょうか?

敷金についてですが、入居者は、破産管財人に対して賃料を支払う場合、敷金返還請求権の額の限度で弁済額の寄託を請求することができるとされています(破産法70条後段)。入居者からこの寄託の請求がなされると、破産管財人は、弁済された賃料を破産財団の保管口座とは別口の預金口座に預金して分別管理し、敷金返還請求権が現実に行使された場合に、当該寄託金分を入居者に支払うことになります。

破産申立後の対応

このように、破産の申立てを行うと、破産管財人が破産法に基づき様々な事務処理を行っていくわけですが、申立人としても、破産の申立てをして終わりではなく、これらの破産管財人の行為に協力する必要があります。

しかしながら、破産管財人は、破産債権者に対する公平な配当の実施を目的として動くため、申立人である不動産オーナーの代理人という立場ではありません。

そのため、破産を検討している場合には、早めに弁護士に相談し、破産の申立時のみではなく、申立後においても破産管財人と申立人との間に立って、申立人と共に手続完了まで伴走するパートナーを見つけることをお勧めいたします。

当事務所では、不動産オーナーの方のお悩みに対応するため、不動産や賃貸借契約に実績のある弁護士も所属しています。どうか、お気軽にご相談下さいませ。

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