会社が破産する際の従業員の未払給与はどうなるのか?
会社の資金繰りが悪化し、破産もやむを得ない状態になると、従業員への給与等の未払いが生じているケースが散見されます。会社が破産する場合、従業員に対する未払いの債務はどうなるでしょうか。
この点、従業員に対する給料、退職金、解雇予告手当に未払いがあるときは、労働債権として破産申し立て時の債権者一覧表に記載することになります。
1.労働債権の取り扱い
①給料
給料のうち破産手続き開始前3か月間のものは、財団債権ととなり、最優先で弁済が受けられることになります。破産申し立てに先立って、未払い給料がある状態で従業員を解雇している場合、破産申立てが遅れてしまうと財団債権部分が無くなってしまい、元従業員が不利益を被ることになりますので、速やかに申立てをすることが必要です。
なお、財団債権とならない未払い給料は優先的破産債権となり、一般の債権よりは優先して扱われることになります。
②退職金
破産に伴い、従業員が退職する場合であっても、破産する会社に退職金規定等がなければ、退職金は発生しないことになります。
退職金規定があり、退職金が発生する場合、退職前3カ月の給料の総額と破産手続き開始前3カ月間の給料の総額のいずれか多い方の額に相当する額が財団債権となります。
なお、会社で退職金共済等に加入し、積み立てを行っている場合には扱いが異なりますので、確認が必要です。
③解雇予告手当
解雇予告手当を支払う余力がない場合は、予告手当を支払わずに即日解雇することになりますが、その場合は解雇予告手当が未払いになります。解雇予告手当の取り扱いについては、裁判所により運用が異なりますが、東京地裁では、破産手続開始前3か月の間に解雇の意思表示がなされた場合の解雇予告手当については、財団債権として扱うことを認める運用がなされています。
2.未払賃金立替制度
未払賃金立替払制度とは、会社が倒産して賃金が支払われないまま退職することを余儀なくされた労働者に対し、未払賃金の一部を独立行政法人労働者健康福祉機構が立替払いしてくれる制度です。
①立替払いを受けられる人
破産申立日の6カ月前から2年の間に退職した人が対象となります。退職後6カ月以上経過した後に破産申立てがなされた場合には、立替払制度を利用することはできなくなりますので、元従業員のためにも破産申し立てを速やかに行うことが肝要です。
②立替払いの請求ができる期間と対象となる賃金
立替払いの請求ができるのは破産手続開始決定の日の翌日から2年以内です。破産手続き開始決定の日と破産申立日は違いますので注意が必要です。
立替払いの対象となるのは退職日の6か月前の日以降に支払日が到来している毎月の給与と退職手当であり、賞与や解雇予告手当は対象となりません。
③立替払いを受けられる金額
立替払いされる金額は未払い賃金の総額の8割ですが、年齢に応じて上限があり、45歳以上の場合は296万円、30歳以上45歳未満の場合は176万円、30歳未満は88万円が上限となっています。
必ず8割を立替払してもらえるわけではありませんので注意が必要です。
破産を選択せざるを得ない場合は、破産手続きにおいて未払い賃金を弁済できる見込みがない場合には、従業員にこのような制度の存在を伝えた上で、利用を促すことも必要になります。どのように対応すべきか、まずは当事務所にご相談ください。