調剤薬局ではFAXが備え付けられている店舗が多いかと思います。
そこで「M&A」とか「事業承継」というような内容が書かれたFAXが送られてきたことはないでしょうか。調剤薬局にとって、「M&A」って必要なの?そう思われている方も多いかもしれません。
今回はこの「M&A」や「事業承継」について説明したいと思います。
M&Aとは
M&Aは『Mergers(合併)and Acquisitions(買収)』の略で、調剤薬局業界に限らず様々な業界で行われていますが、M&Aが行われる理由は様々です。会社・事業を手放す側としては、個人事業で会社を運営してきたが後継者がいない等の人手が不足等の人的要因によるもの。将来を見越して、高額で売却できる時に売却を行うような財務的な要因によるもの。他方で、会社・事業を買収する側としては、事業の拡大を行いたいというような、事業の拡大を目的とするものや既に立ち上がっている事業を買収し、新規事業を立ち上げることを目的とするものなどがあり、M&Aを実施する理由は様々です。
調剤薬局におけるM&A
それでは、調剤薬局事業の場合はどのような理由でM&Aが行われることが多いのでしょうか。
まず、会社・事業を手放す、いわゆる売り手側ですが、現在の調剤薬局業界では、人手不足、後継者不在が問題となっていることは皆さんもご存じかと思います。しかも、通常の業界と異なる点として、調剤薬局は医療機関の近くで事業を行っていることが多く、閉局してしまうと、医療機関のドクターや患者さんに迷惑がかかるため、一度始めてしまうと簡単には閉局をすることはできない点が、理由として挙げられます。
そこで、なんとかして後継者や従業員を雇おうとすると、業界自体人手が不足しているため簡単に人は集まらず、無理に集めようとすると高額の給与等を払うことになり、事業としての採算があわなくなってしまうという悪循環に陥ることになります。このように一度八方塞がりになってしまうと、悪循環から抜け出すことはなかなか難しくなります。したがって、速やかに人員を補充してもらえるような買い手を選ぶこととなるでしょう。
買い手側にとって重要なポイント
一方で会社・事業を買収する、いわゆる買い手側ですが、こちらとしては事業の拡大を狙って買収をすることが多いと考えられます。新規出店を行うよりは、今順調に業績を重ねている薬局を買収してしまえば、その売上がそのまま手に入るのですから、低リスクで事業の拡大を行うことができるのです。
もっとも、買い手側も人手不足の場合、いくら事業を拡大しようと思っても、売り手側が人員を求めているのであれば、両者でニーズが合わずM&Aは成立しないことになると考えられます。昨今は大手の調剤薬局企業が人気のため、人員は大手企業に集まる傾向にあり、人手不足の企業はこのような大手企業に買収されるケースが多いように思います。
このように、お互いのニーズが合致すれば、M&Aが成立し売り手側と買い手側、共に利益を得ることができます。
相手選びが必要
M&Aは売り手と買い手があって初めて成立するため、まずは自分に合う相手を見つける必要があります。最近では、多くの仲介業者が調剤薬局業界のM&Aを行っているため、相手方を見つけるために話を聞いてみるのも良いと思います。
しかし、仮に相手が見つかったとしても、M&Aの手続きは簡単に行うことはできません。会社や事業を一つに統合するためには、法律や経理・税務的に様々なルールが定められており、それぞれの分野で専門家を含めて検討することが望ましいです。契約書の作成から経理処理まで日常行っている薬局経営とは業務が大きく異なるため、初見で実施するのは難しく、仮にできたとしても、買収後に様々な問題が生じることも考えられます。
そのため、M&Aをスムーズに行うため、デューデリジェンスと呼ばれる買収前監査という調査が行われ、問題の洗い出しを事前に行うケースが多いです。必要な手続を弁護士や税理士等の各専門家に確認し、進めていくのがよいでしょう。
今まで見てきたように、事業継続に関し不安等がある場合、M&Aは有用な手段と言えますが、売り手と買い手のマッチング、複雑な手続き等踏まなければならないステップは多く、一つ一つ着実に行う必要があります。
M&Aを検討する場合、まずは経験者や専門家等に相談するのが良いでしょう。
弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所
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