Contents
結論から申し上げれば、法人の破産に際し、従業員全員を解雇することになります。
では、どのようなタイミングで従業員の解雇を行うべきか、解雇に伴い、必要な手続きはどのようなものがあるかご説明したいと思います。
①解雇のタイミングについて
破産申立て前に事業を完全に停止する場合は、残務処理等のために従業員を残す必要はありません。また、破産申立後に、管財人の業務を円滑にするため、会社の経理に詳しい従業員を残すかどうかという問題がありますが、代表者等が事情を把握していれば、そのためにあえて解雇を先延ばしにする必要はないのが一般的です。
上記のような観点から、従業員を残す必要がないのであれば、破産申立て前になるべく早く解雇して、従業員が早期に失業保険の給付を受けられるようにしてあげましょう。破産に至る過程で、すでに給料の支払が滞っていたりすることも珍しくありませんので、早期に解雇するほうが従業員にとってもメリットとなる場合もあります。
なお、解雇に際しては、資金に余裕があれば、解雇予告手当を支払った上で即日解雇、資金に余裕がなければ、解雇予告手当の支払いなしで即日解雇するのが一般的です。なお、解雇予告手当の支払いなしに即日解雇された従業員の解雇予告手当の支払については、破産手続き内の処理に委ねることになります。
また、破産申立後の管財業務に協力を得る必要がある従業員に対しては、破産申立て前に解雇予告のみを行い、速やかに破産申立てした後、解雇予告の効力が生じる30日後までに協力を得るという方法をとる場合もあります。
②解雇に際して必要な準備等
従業員の解雇に際しては、解雇通知書の準備をする必要があります。併せて、解雇された従業員が、再就職先での年末調整や、確定申告の際に困らないように源泉徴収票を、解雇と同時に、少なくとも解雇後速やかに交付できるようにしておくことも必要です。
さらに、元従業員が速やかに失業保険を受給できるようにすることが肝要ですが、そのためには、雇用保険被保険者離職証明書、雇用保険被保険者資格喪失届を速やかにハローワークに提出できるように準備しておかなければなりません。なお、解雇理由については「会社都合」と記載することで、元従業員は特定受給資格者として通常よりも長期間失業手当を受給できるようになります。
このほかにも、住民税を特別徴収から普通徴収に切り替えるための手続、社会保険や厚生年金の切り替えのための手続等がありますので、元従業員のためにもしっかりと準備をするだけでなく、元従業員において行わなければならない手続きについても説明をしておくとよいでしょう。
従業員の解雇時期や、破産申立後に協力を仰ぐ従業員の必要性については、判断が難しい点もありますし、従業員にできる限り迷惑をかけないためにも、経験豊富な弁護士にご相談していただくことをお勧めします。
関連記事
倒産に際して知っておくべき10か条
会社破産のメリット
リスケジュールによる自主再建
飲食業における法人破産
飲食業の皆様が「破産(倒産)」を決める前にできること
廃業という選択
会社が破産する際の従業員の未払給与はどうなるのか?
アパレル業界の破産について
建設業界の破産
弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所
最新記事 by 弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所 (全て見る)
- 【景表法】学習塾に措置命令相次ぐ - 2023年3月9日
- 有名アーティストのライブに係る優良誤認の措置命令 - 2023年2月17日
- 調剤薬局でよくあるクレーム②~調剤過誤~ - 2022年12月23日