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弁護士が教える新型コロナウィルス対応:安全配慮義務

はじめに

使用者には、労働契約に伴う付随義務として、従業員に対し、従業員が就労するにあたり、その心身の安全や健康が確保されるよう配慮すべき義務(安全配慮義務)を負います。このような安全配慮義務は、多数の裁判例を経て、法律上の義務として明示されるに至りました(労働契約法5条)。では、今般の新型コロナウィルスの流行の中、安全配慮義務を負う使用者としては、どのような対応をすべきでしょうか。

在宅勤務における安全配慮義務

在宅ワークイメージ

新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、多くの企業では在宅勤務が行われるようになりましたが、在宅勤務も労働契約に基づくものである以上、出勤を伴う通常勤務と同様に、使用者は従業員に対し、安全配慮義務を負います。

まず、在宅勤務では労働時間と日常生活との区切りが曖昧になりがちで、長時間労働になりやすい傾向があります。そこで、長時間労働による従業員の心身の健康悪化を防止するため、労働時間を適切に管理することが求められます。具体的には、日々の業務日報や勤怠管理システムに始業時刻と終業時刻を正確に記録し、不適切な長時間労働をしている従業員を発見した場合には、業務量を減らす等、速やかにこれを是正する仕組みを設けること等が必要です。

また、在宅勤務における心身への負荷は、労働時間の長短のみならず、上司や同僚とのコミュニケーション不足がもたらす孤独感や、自宅における業務と家事、育児との両立の難しさに由来することも多々あります。

そこで、このような目に見えづらいストレスを認識、把握するためにも、適宜ストレスチェックを行う、従業員が上司と定期的に電話、面談などで連絡を取りあう等、従業員の心身の不調を早期に発見するための工夫が重要です。

他方で、在宅勤務は、従業員の自宅というプライベートな空間で行われることから、在宅勤務特有のハラスメントの危険も指摘されています。例えば、ビデオ会議で写りこんだ自宅や私服、家族の様子等から、従業員の私生活を詮索することは、従業員に対し、常に監視されているような不快感を与え、かえって精神的な圧迫を加える恐れがあるので注意が必要です。

その他、災害発生時に備えて、緊急事態におけるマニュアルを整備、周知し、従業員の緊急連絡先や業務遂行場所である従業員の自宅の場所を正確に把握しておくこと、情報通信機器を用いる従業員については、「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」等にも留意し、従業員の身体に過重な負担がかからないよう、必要な対策を講じることも大切です。

通常勤務における安全配慮義務

業務の性質上、在宅勤務が不可能な場合、あるいは緊急事態宣言の解除を受け、通常の勤務形態に戻す場合にも、使用者は新型コロナウィルス対策としての安全配慮義務を果たす必要があります。

安全配慮義務は、使用者に結果責任を負わせるものではなく、従業員が結果として新型コロナウィルスに感染してしまったとしても、直ちに使用者の安全配慮義務違反となるわけではありません。

もっとも、使用者は、感染リスクや感染経路、感染予防法などについて、常に正確な情報収集に努めてこれらを把握しなければならず、科学的、医学的な基準、根拠に基づいて、現時点で適切かつ効果的と認められる措置を講じる必要があります。

具体的には、マスクの配布、消毒薬の常備、衝立の設置といった感染予防のための物品整備に加え、出勤・退勤時の検温・体調報告、定期的な換気、長時間又は大人数での会議の回避、ソーシャルディスタンスの保持、出張の回避、時差通勤、昼休みの延長による混雑緩和、社員が発症した場合の報告ルートと対策マニュアルの整備等の仕組みを作り、着実にそれらを実行していくことが重要です。

おわりに

安全配慮義務は、使用者が従業員に対して負う法的な義務であり、対応が不十分だと従業員から損害賠償請求をされるなど、思わぬトラブルに発展する可能性があります。他方で、一言で安全配慮義務と言っても、その具体的な義務の内容は、事業の規模、業種、就労形態等により、個別的な判断が必要です。

新型コロナウィルスという新たなリスクが生じている昨今において、安全配慮義務の履行として何を、どこまで行うべきか、弁護士などの専門家に相談してみるのも良いでしょう。

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